遺伝子データ活用Q&A:家族性疾患の検査で、家族のプライバシーは守られる?
ご自身の健康やご家族の健康を考える上で、家族性疾患の遺伝子検査を検討されることがあるかもしれません。特定の病気がご家族や親戚の中で複数の方に見られる場合に、「自分や家族も同じリスクを持っているのだろうか」と心配になるのは自然なことです。
このような状況で遺伝子検査を受けるにあたり、「自分の検査結果から家族の情報まで分かってしまうのではないか」「家族に知られずに検査を受けたいけれど、プライバシーは守られるのだろうか」といったご心配をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
この疑問に対し、遺伝子検査と家族のプライバシーについて、分かりやすくご説明します。
家族性疾患と遺伝子検査の関係性
まず、家族性疾患と遺伝子の関係について簡単に触れておきましょう。すべての病気が遺伝子だけで決まるわけではありませんが、中には特定の遺伝子の特徴が病気の原因になったり、病気にかかりやすさに関連したりするものがあります。このような遺伝子の特徴が家族内で受け継がれることで、同じ病気が家族や親戚に多く見られる場合があります。これが一般的に「家族性疾患」と呼ばれる状態の一つです。
遺伝子検査は、ご自身の体の設計図ともいえる遺伝子情報を詳しく調べることで、特定の遺伝子の特徴を持っているかどうかを確認するものです。
自分の検査結果から家族の情報はどこまで分かるの?
遺伝子は親から子へ受け継がれますので、ご自身の遺伝子情報には、ご家族(親、兄弟姉妹、お子さんなど)と共通する部分が多く含まれています。そのため、ご自身の遺伝子検査の結果から、ご家族が同じ、あるいは関連する遺伝子の特徴を持っている可能性が高いと推測できる場合があります。
しかし、これはあくまで「推測」ができる可能性がある、ということです。あなたの検査結果から、ご家族一人ひとりがどのような遺伝子を持っているのか、あるいはどのような病気のリスクがあるのかを正確に特定することはできません。 遺伝子の受け継がれ方には多様性があり、たとえ家族であっても全く同じ遺伝情報を持っているわけではないからです(双子の場合を除く)。
検査結果やデータは家族に知られずに済みますか?
遺伝子検査を受ける際、通常、検査結果は検査を受けたご本人に伝えられます。 検査サービスを提供している会社や医療機関が、ご本人の同意なく、直接ご家族に結果を伝えることはありません。これは、ご自身の遺伝子情報が非常に個人的な情報であり、個人情報保護の観点からも厳重に扱われるべき情報だからです。
ただし、検査結果を受け取ったご自身が、その情報を誰かに話したり、書面やデータで共有したりすることは、ご自身の判断によります。ご家族に話すかどうか、検査を受けたこと自体を知らせるかどうかは、ご自身で決めることができます。
検査会社は私の遺伝子データをどう扱っているの?家族のプライバシーは?
遺伝子検査会社は、お客様からお預かりした遺伝子データを適切に管理する責任があります。多くの信頼できる検査会社では、個人情報保護法などの法令遵守はもちろん、厳重なセキュリティ対策を講じてデータを保護しています。
- 個人情報の匿名化・仮名化: 多くの会社では、お客様のお名前や住所といった個人を特定できる情報と、遺伝子データとを分けて管理したり、直接個人が特定できないように加工したりしています(匿名加工情報や仮名加工情報といいます)。これにより、たとえデータが扱われる際も、すぐに「誰のデータか」が分からないようになっています。
- 同意の範囲: 遺伝子データの利用目的(検査結果の提供、研究開発への活用など)については、検査を受ける前に必ず説明があり、ご自身の同意を得ることになっています。ご自身が同意した範囲を超えて、データが勝手に使われることはありません。
- 家族のデータとして直接利用されない: ご自身の遺伝子データが、直接「ご家族のデータ」として検査会社内で登録・利用されることはありません。あくまで「ご本人から提供されたデータ」として扱われます。
ただし、前述の通り、ご自身のデータからご家族に推測できる情報があることは事実です。検査会社が統計的な解析などで、ご自身のデータを含む多くのデータを使って遺伝的な関連性を研究する場合、それは特定の個人(ご家族を含む)を特定することを目的としたものではなく、あくまで集団レベルでの傾向や、遺伝子の仕組みを解き明かすために行われるものです。そして、このような研究への活用についても、多くの場合、事前に同意の確認があります。
安心のために、検査を受ける前に確認したいこと
家族性疾患に関する遺伝子検査を検討される際は、プライバシーに関するご心配を解消するためにも、以下の点を確認されることをお勧めします。
- 検査会社のプライバシーポリシーや利用規約を読む: 会社がどのように遺伝子データを取得し、利用し、管理し、保護するのかについて詳しく説明されています。専門的な言葉が多くて分かりにくい場合は、その会社に問い合わせて質問してみましょう。
- データの匿名化や管理方法について質問する: どのようなセキュリティ対策をとっているのか、個人を特定できないようにどのようにデータを扱っているのかなど、具体的に質問してみることも安心材料になります。
- データ活用の同意範囲を確認する: 検査結果を受け取るだけでなく、そのデータが今後の研究開発などに使われる可能性があるのか、その場合、どのように匿名化されるのか、同意しないという選択肢(オプトアウトといいます)があるのかなどを確認しましょう。
- 家族との話し合い: ご自身の検査がご家族にも関連する可能性を理解した上で、必要に応じてご家族と話し合うことも大切です。しかし、これはあくまでご自身の判断であり、検査を受ける前に必ず家族に伝えなければならない、という決まりはありません。
まとめ
家族性疾患の遺伝子検査を受けることで、ご自身の健康管理に役立つ情報を得られる可能性があります。ご自身の検査結果から、ご家族に遺伝的な特徴がある可能性が推測されることはありますが、ご自身のデータが直接ご家族のデータとして扱われたり、ご家族の同意なく情報が共有されたりすることはありません。
信頼できる検査会社を選び、提供される情報(プライバシーポリシーや規約など)をしっかりと確認し、ご自身のデータがどのように扱われるのかを理解することが、安心して検査を受ける上で非常に重要です。もし不明な点があれば、検査会社に遠慮なく問い合わせてみてください。ご自身の、そしてご家族のプライバシーは、適切に保護されるべき大切な情報です。