データゲノムQ&A:遺伝子データと日々の健康情報、連携のメリット・デメリットと安心するための確認ポイント
遺伝子データと日々の健康情報、連携のメリット・デメリットと安心するための確認ポイント
遺伝子検査を受けて、自分の遺伝子データから健康に関する傾向を知ることは、日々の健康づくりに役立つ第一歩となるかもしれません。さらに、この遺伝子データと、普段の健康診断の結果や、ウェアラブルデバイス(身につけることで心拍数や活動量などを記録できる機器)で記録した運動量、食事の記録といった「日々の健康情報」を組み合わせて活用できるサービスも出てきています。
こうしたサービスは、あなたの遺伝子の傾向と実際の生活習慣を合わせて見ることで、よりあなたにぴったりの健康アドバイスや、病気予防のアプローチを提案してくれる可能性があります。例えば、「特定の栄養素を吸収しにくい遺伝子の傾向がある」という情報に、「日々の食生活でその栄養素が不足しがち」という情報が加われば、「具体的な食事の摂り方」や「どんな食品を意識すると良いか」といった、より実践的なアドバイスにつながることが期待できます。
便利そうだけど、自分の遺伝子データと健康診断の結果、毎日の活動記録まで、たくさんの情報が一箇所に集まって使われるのは、なんだか心配だと感じる方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、遺伝子データと他の健康情報を連携させて活用する際のメリットとデメリット、そしてあなたのプライバシーを守るためにどのような点を確認すれば良いのかを分かりやすくご説明します。
なぜ情報を組み合わせるの?どんなメリットがあるの?
遺伝子データは、あなたが生まれ持った体質の傾向や、将来かかりやすいかもしれない病気のリスクに関する大切な情報を含んでいます。しかし、それだけであなたの健康状態のすべてが分かるわけではありません。なぜなら、私たちの健康には、遺伝子の情報だけでなく、日々の食事、運動、睡眠、ストレスといった「生活習慣」や、過去の病歴、現在の体調などの「環境要因」も大きく影響するからです。
そこで、遺伝子データと、健康診断の結果(体の状態を数値で示す情報)やウェアラブルデバイスからのデータ(普段の活動や睡眠に関する情報)、食事記録(何をどれだけ食べたかという情報)といった日々の健康情報を一緒に使うことで、より多角的にあなたの健康状態を把握できるようになります。
これにより、以下のようなメリットが期待できます。
- よりパーソナルな健康アドバイス: 遺伝子の傾向と実際の生活習慣の両方に基づいた、あなたにとってより具体的で実践しやすい健康づくりのアドバイスが受けられる。
- 病気予防や早期発見への貢献: 遺伝的なリスク傾向と、日々の生活習慣の課題を組み合わせて評価することで、特定の病気に対するリスクをより正確に把握し、早期の対策につなげられる可能性がある。
- サービスの質の向上: あなたを含む利用者の多様なデータを組み合わせることで、サービス提供側がより精度が高く、役立つ新しい健康管理方法や情報を開発することにつながる。
情報を組み合わせることで生まれるプライバシーの心配
遺伝子データと日々の健康情報が組み合わさることで、あなたの体質、生活習慣、病気のリスクといった、非常に詳細なあなたの健康に関する「プロファイル」(あなたの特徴や傾向を詳しくまとめた情報)が作られることになります。情報が一つ一つは断片的でも、たくさん集まって組み合わさることで、あなたのことがより深く分かってしまうということです。
このように情報量が増えることで、いくつか心配な点が出てくる可能性があります。
- より詳細なプロファイリングとその利用: たくさんの情報が組み合わさることで、あなたの健康状態や行動パターンが非常に細かく分析される可能性があります。この詳細なプロファイルが、サービスの提供以外の目的(例えば、特定の企業からの商品やサービスの推奨など)に利用されないか心配になるかもしれません。
- 複数のサービス間での情報共有: 遺伝子検査サービス、健康管理アプリ、ウェアラブルデバイスのサービスなど、異なるサービス間で情報が連携される場合、それぞれのサービスがあなたの情報をどのように扱い、誰と共有するのかが分かりにくいと感じることがあります。
- 万が一の情報漏洩時の影響の大きさ: 一箇所に集約された情報が、万が一、外部に漏れてしまった場合、その影響は単一の情報が漏れるよりも大きくなる可能性があります。あなたの遺伝子の特徴や、具体的な病歴、日々の生活習慣までが一度に知られてしまうリスクが考えられます。
- 匿名化されていても特定されるリスク: 多くのサービスでは、個人を特定できないように「匿名加工」(名前や住所など、個人を直接特定できる情報を削除・加工すること)した上でデータを活用すると説明しています。しかし、遺伝子データと他の膨大な健康情報が組み合わさることで、たとえ匿名加工されていても、他の情報と照合されるなどして、結果的に個人が特定されてしまう可能性がゼロとは言い切れないのではないか、という不安を感じることがあるかもしれません。
こうした心配は、サービスを利用する上で当然抱く可能性のあるものです。大切なのは、こうした可能性を知った上で、ご自身で確認し、納得できる範囲でサービスを利用することです。
プライバシーを守るために、これだけはチェック!
遺伝子データと他の健康情報を連携させて便利に活用するために、あなたのプライバシーを守る上で特に確認しておきたいポイントがいくつかあります。サービスを利用する前に、以下の点をチェックすることをおすすめします。
- 利用規約やプライバシーポリシーをしっかり確認する: サービスがあなたの遺伝子データや健康診断の結果、ウェアラブルデバイスからのデータなどを「どのような目的で」「どのように利用するのか」「誰と共有する可能性があるのか」「どれくらいの期間保管するのか」といった重要な情報が書かれています。専門用語が多くて難しく感じるかもしれませんが、特に「個人情報の利用目的」「第三者提供について」「情報の保管・削除について」といった項目に注目して、ご自身が納得できる内容かどうかを確認してみてください。
- 「同意します」の内容を具体的に理解する: 情報を連携させる際に求められる「同意」が、具体的にどのような情報の連携・利用に対するものなのかを明確に理解することが重要です。「ただ便利になるから」と安易に同意するのではなく、同意することによってあなたのデータがどのように使われるのかを、サービスのウェブサイトの説明やヘルプなどを参考にして確認しましょう。一度同意しても、後から同意を撤回したり、情報連携を解除したりできるかどうかも確認しておくと安心です。
- 提供する情報の範囲を選べるか確認する: サービスによっては、健康診断の結果やウェアラブルデバイスのデータなど、連携する情報の種類を選べる場合があります。必要以上に多くの情報を連携しないように、サービスが提供する機能と照らし合わせながら、連携する情報の範囲を検討することもプライバシー保護につながります。
- サービスのセキュリティ対策を確認する: あなたの大切な情報を預けるサービスが、どのようなセキュリティ対策(情報を不正なアクセスや漏洩から守るための技術や取り組み)を行っているかも確認しておきましょう。ウェブサイトに「セキュリティ対策について」といった説明が掲載されているか、業界標準の認証を取得しているかなどが判断材料になります。ただし、専門的な内容は分かりにくい場合もありますので、サイトの説明が平易で、信頼できる事業者であるかといった点も大切です。
- 情報の削除や連携解除の方法を確認する: 万が一、サービス利用をやめたい場合や、特定の情報連携を解除したい場合に、あなたのデータがどうなるのかを確認しておきましょう。退会手続きの方法だけでなく、提供したデータが完全に削除されるのか、または匿名化されて保管されるのかなど、情報の扱いについて事前に知っておくことは安心につながります。
まとめ
遺伝子データと日々の健康情報を連携させることは、あなたの健康管理をより効果的でパーソナルなものにする大きな可能性を秘めています。その一方で、大切な個人情報である遺伝子データや健康情報が組み合わさることで、プライバシーに関する新たな心配も生まれる可能性があります。
こうしたメリットとデメリットを理解し、ご自身の安心・安全を確保するためには、サービスを利用する前に「何のために」「どんな情報が」「どのように使われるのか」をしっかり確認することが大切です。そして、納得できない点があれば、安易に同意せず、情報の連携やサービスの利用を見合わせる判断も必要になります。
ご自身のデータをどのように活用し、どこまで情報を共有するかは、最終的にはあなたが決めることです。この記事が、遺伝子データと他の健康情報を組み合わせたサービスの利用を検討される際の、安心のための判断材料となれば幸いです。