遺伝子検査結果が保険加入や就職に不利になるって本当?
遺伝子データ活用とプライバシーに関する疑問にお答えする「データゲノムQ&A」です。
遺伝子検査に興味がある一方で、「将来、もし病気のリスクが高いという結果が出たら、保険に入りにくくなったり、仕事探しで不利になったりするのでは?」といった漠然としたご心配があるかもしれません。大切なお体の情報ですから、将来への影響が気になるのは当然のことです。
この記事では、遺伝子検査の結果が将来の保険加入や就職にどう関係するのか、国のルールなどを踏まえてご説明します。
遺伝子データは保険加入に影響するの?
まず、保険加入についてです。生命保険や医療保険に加入する際には、現在の健康状態や過去の病歴などを保険会社に伝える「告知」が必要になります。この告知の際に、遺伝子検査の結果も申告しなければいけないのか、また、その結果によって保険への加入が難しくなるのではないか、とご心配される方もいらっしゃるかもしれません。
国のルールでは、保険において、病歴など合理的な理由に基づかない不当な差別的な取り扱い(特定の情報を持っているだけで加入を拒否したり、保険料を上げたりすること)は原則として禁止されています。
日本の生命保険協会は、遺伝情報に関するガイドラインを定めており、多くの保険会社は、遺伝子検査の結果だけを理由に、保険加入をお断りしたり、保険料や保障内容を変えたりすることは基本的にないという考え方を示しています。
保険会社が加入の判断に利用するのは、主に医師の診察結果、健康診断の結果、過去の病歴など、すでに現れている具体的な健康状態に関する情報です。遺伝子検査で将来の病気のリスクが高いという結果が出たとしても、それはあくまで「可能性」であり、現時点での健康状態を示すものではないため、告知義務の対象とならないケースがほとんどです。
ただし、すでに何らかの症状が出ていて医師の診断を受けている場合や、検査結果を受けて実際に治療や診断のための詳しい検査を受けている場合などは、告知義務の対象となる可能性があります。これは遺伝子検査をしたかどうかに関わらず、一般的な告知義務として必要になる情報です。
結論として、遺伝子検査で将来のリスクが分かったとしても、それだけで保険加入に大きな影響が出る可能性は低いと考えられます。心配な場合は、加入を検討している保険会社に個別に問い合わせて確認してみるのも良いでしょう。
遺伝子データは就職活動に影響するの?
次に、就職活動についてです。企業が採用選考の際に、応募者の遺伝子情報を知ることはできるのでしょうか。また、それを理由に採用・不採用を決めることはあるのでしょうか。
結論から申し上げますと、企業が採用選考の過程で、応募者の遺伝子情報を本人に無断で収集したり、利用したりすることは、原則として国のルールで禁止されています。
個人情報保護法や雇用対策法などのルールでは、企業が個人情報(特に遺伝情報のような機微(きび)情報と呼ばれる、取り扱いに注意が必要な情報)を扱う際には厳しい制限があります。採用活動において、企業は応募者の能力や適性を判断するために必要な情報だけを収集することが求められています。遺伝情報は、直接的に応募者の仕事の能力や適性を示すものではないため、採用の判断材料として利用することは不適切と考えられています。
もし企業が応募者の遺伝子情報を不適切に収集したり利用したりした場合は、これらの法律に違反する可能性があります。
したがって、遺伝子検査を受けたという事実やその結果が、企業の採用活動で不利益につながる可能性は、国のルールによって非常に低く抑えられています。安心して就職活動に臨んで良いと言えるでしょう。
ただし、特定の職種(例えば、特定の化学物質を取り扱う現場作業員など)で、健康診断の結果として遺伝的な要因が関連する健康リスクについて確認が必要となるケースなどがごく例外的に存在する可能性はゼロではありません。しかし、これは非常に限定的な状況であり、一般的な採用活動においては、遺伝子情報が選考に使われることは考えられません。
まとめ
遺伝子検査の結果が、将来の保険加入や就職に不利に働くのではないかというご心配は、国のルールによって、その可能性が低く抑えられています。
- 保険について: 多くの保険会社では、遺伝子検査の結果だけを理由に加入を断ったり、条件を変えたりすることは基本的にありません。告知が必要なのは、すでに現れている具体的な健康状態に関する情報が主です。
- 就職について: 企業が採用選考で遺伝子情報を不適切に収集・利用することは、国のルールで原則禁止されています。遺伝情報が採用の判断に使われることは考えにくいです。
遺伝子データは非常にデリケートな情報であり、その取り扱いには十分な配慮が必要です。サービスを選ぶ際には、利用規約などを確認し、ご自身のデータがどのように扱われるのかを理解することが大切です。
「データゲノムQ&A」では、これからも皆さまの疑問に分かりやすくお答えしていきます。